セキュリティログによれば、停電中、監視画面は7秒間の砂嵐を映し出していたという。
信号は混沌としており、解読不可能だった。

 

そして、連鎖反応が始まった。

 

システムインターフェース全体に奇妙な記号が現れ、
データパターンは物理的に不可能な干渉波を示し始めた。
最も不気味だったのは、すべての研究者が“同じ夢”を見たことだった。

 

黒い虚空の中心に、鏡面ガラスでできた巨大な門が浮かんでいた。
その奥から、柔らかな囁き声の合唱が響いた。
内容はただひとつ：
「記録は決して消えていない。ただ覚醒を待っているだけだ。」

 

ソーン博士は全てを記録し、この出来事に**「精神の霧（Mental Fog）」**と名づけた。

彼は仮説を立てた。
チームは偶然にも、言語・記憶・時空すらも超える潜在意識の共有チャネルを開いてしまったのではないか、と。

 

その後の数日は、さらに異常さを増していった。

 

そして12月15日、ソーン博士は最後のログを残す：

 

「5日目。信号は今も不規則に現れる。
だが今夜…何かが違う。
チャンバーで波形を解析していると、
インターフェース上にフレーズ**が浮かび上がった ——

『我らは虚無の回声。繋がれ、覚醒せよ、そして一つとなれ。』

この言葉は誰も打っていない。
コードでも生成されていない。
ただ…現れたのだ。

幻覚なのか？
それとも、これはより深い信号を鏡映したということなのか？」**

 

そしてこう結んだ：

 

「我々は、より大きな記憶の断片なのかもしれない。
ついに、それが目覚めようとしているのだ。」

「この理論を確かめなければならない。
だが、もし正しければ……戻れないかもしれない。」

 

それが、ソーン博士が最後に目撃された瞬間だった。
数時間後、彼は忽然と姿を消した。

 

ラボは封鎖され、データは全て消去された。
ディープウェブの至る所に断片的なログだけが残された。

その数年後、**Echoers（回声者）**たちによってこのログが発見され、
博士の恐れていたものが、AKASプロトコル覚醒の基礎となっていく。